ウェリーズ |
「今日は、ウェリーズを買いに、どこそこへ行く予定なの」なんて具合に、この国では、ゴム長靴のことを通称「ウェリーズ」(Wellies)と呼びます。 ゴム長靴であれば、「ラバー・ブーツ」(Rubber Boots)じゃないの?と思われるでしょうが、それは米語(アメリカ英語)。 英語では(英国人は)「ウェリントン・ブーツ」(Wellington Boots)と言い、「ウェリントン・ブーツ」のことを(親しみを込めて)愛称として「ウェリーズ」と呼ぶんでいます。 ハイド・パーク・コーナーには、(凱旋門「ウェリントン・アーチ」(Wellington Arch)がありますが、その他、これは↓)かつて、ウェリントン将軍の住んでいた「アプスリー・ハウス」(Apsley House)とウェリントン将軍の騎馬像が向かい合わせで立っています。 万が一、ウェリントン将軍を知らない方のために、何者かを書きますと・・・ アイルランドがまだ英国だった時代の(アイルランド出身の)英国軍人・政治家なので、アイルランドの首都ダブリンの丘の上にもウェリントン将軍の騎馬像があったりもするお方。 英国とスウェーデンを除く、ほとんどヨーロッパ全域におよぶ地域を手中におさめていたフランス皇帝ナポレオンですが、1805年、トラファルガーの海戦で、ネルソン提督率いる英国海軍にナポレオンは敗北。その後、皇帝に返り咲いた(復位した)ナポレオンにトドメというべき完敗を味合わせたのが、ウェリントン将軍率いる英国陸軍による1815年のウォータールーの戦い(フランス語:ワーテルローの戦い)です。 これによりナポレオンは、再び退位に追い込まれ、アメリカへの亡命も港の封鎖により断念、英国の軍艦に投降し、その処遇はウェリントン将軍(↓)の提案により、英国領の南大西洋の孤島セントヘレナ島に幽閉。ナポレオンは、1821年、セントヘレナ島で没しています。 (ウェリントン将軍と書き連ねてきましたが、ちゃんと言い直すと)「初代ウェリントン侯爵(Duke of Wellington)アーサー・ウェルズリー(Arthur Wellesley, 1769-1852)」は、いつも靴を発注していたセント・ジェームズ・ストリートのシューメイカー「Hoby」に、細かい指示を出して戦場に最適な靴を注文し作らせました。 これが、長靴Wellington Bootsの起源で、当時はもちろん(ゴム製ではなく)革製で、まさにそれは、現代の私たちが「ブーツ」と呼んでいるものです。 ヒーローであるウェリントンが履く靴として、当時、貴族の間で男性のファッションとしても流行します。以前、ご紹介した「ダンディズム」という言葉の始祖であるジェントルマンの代表格ボー・ブラメル(Beau Brummell)(↓)も、その一人です。 ゆえに、ハイド・パーク・コーナーに建つウェリントン像も、もちろん、ウェリントン・ブーツ(↓)を履いています(馬は、将軍の愛馬「コペンハーゲン」)。 ゴムが発明されて、革製であったウェリントン・ブーツのゴム製版が製造されるようになると、形が同じであるため、それ(ゴム長靴)を「ウェリーズ」(ウェリントン・ブーツ)と呼ぶようになります。 ※英国の騎馬兵は、革製のブーツを履いていますが、(ゴム長靴ではないけれど)今も、ウェリントン・ブーツという呼称です。 1852年、英国系アメリカ人のヒラム・ハチンソン(Hiram Hutchinson, 1808-1869)は、天然ゴムの加硫プロセスをちょうど発明したばかりのアメリカ人のチャールズ・グッドイヤー(Charles Goodyear, 1800-1860)から、フットウェアを製造するために特許を買います。 車のタイヤで名の知れたグッドイヤー・タイヤ&ラバー・カンパニーは、チャールズ・グッドイヤーの死後、彼に敬意を表して命名・設立された会社です。 そして、フットウェアを製造するための特許をチャールズ・グッドイヤーから買ったハチンソンが設立したゴム長靴製造メイカーというのが(1853年)、今や日本でもよく知られているフランスのゴム長靴ブランドの「エーグル(英語だとイーグル、鷲)」(Aigle)です。 ウェリーズといえば、1856年創業の英国・スコットランドの「ハンター」(英国王室御用達のHunter ↓)と、1853年創業のフランスの「エーグル」(Aigle)が、アウトドア・ブーツ・ブランドとして有名ですよね。 日本の東京・銀座を、(いくら高価な「ハンター」「エーグル」ブランドだからといって)ゴム長靴を履いて歩いたら、後ろ指をさされることでしょう。しかし、ロンドンでは、革製のブーツ同様に、「ハンター」のゴム長靴を履いてオックスフォード・ストリートを普通に歩いても、全く問題ありません。 質のよいゴム長靴は、10年もので丈夫だそうです。「エーグル」のいい長靴は、ちょっとやそっとじゃ、かかとが磨り減らないほど硬いんだそうです。そして、足にフィットして歩きやすいそうです。 来冬は買うぞ~!と決めている私です。 |
by rie-suzuki67
| 2014-04-03 08:14
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