象が飼われていた場所 |
「なぜだ? 」と考えさせられる不可思議な道というのが、英国には幾つもあります。その一つが、セルフリッジ百貨店の横のDuke Street。 なぜ、不可思議か?というと、行政域「メイフェア」のグロヴナー・スクエアから、オックスフォード・ストリートを縦断してしまい、北側の行政域「メリルボーン」のマンチェスター・スクエアまで貫通してしまっているからです。 ヴィクトリア時代、メイフェア地区(やセント・ジェームズ地区)は、世界でも際立った富の集積地でした。象を飼っている、虎を飼っているなんてことが、貴族の趣味だった時代もあります。 メイフェア地区は、西にパーク・レーン、東にリージェント・ストリート、南にピカデリー通り、北にオックスフォード・ストリートという道によって囲んだ四角形のようなエリアですが、これらの道を突き抜けて、隣の行政域にまたがる名前の道は、この例外といえるDuke Streetしかありません。通常は、行政域内で完結し、道の名前が変わります。 この謎は、単に、行政体よりも、道の歴史の方が古いからというものではなく、メイフェアの中の不思議な一角に隠れた理由があります。 Duke Streetを歩いたことのある人しかわからないと思いますが、この通りには、大きな門構えのようなパビリオンと(上に上がるための)階段を東西に持ち、ポートランド・ストーンでできている高さ5m以上はあろうかという窓を持つ塀で囲まれたバロック様式の長方形の建築物があります。 ブラウン・ハート・ガーデンズ(Brown Hart Gardens)という名称ですが、ガーデンなのに上がることができないよう閉じられていて、昔、がっかりしたことがあります。 しばらくぶりに、通りかかったら、何と!カフェチェーンのBenugoが上部にオープンしていて・・・ かつ、本当にガーデンになり、人々が寛いでいました。去年2013年6月に公開されオープンしたそうです。 この不可思議な一角である建物、一体、なんなのか?というと、1905年に建築された変電所です(以前、レスター・スクエアの地下トンネルについてご紹介した時に、オックスフォード・ストリートの店々に電力を供給するための変電所が、Duke Streetにあると補足しましたが、それです)。 実は、この変電所が建設される前の1800年代のヴィクトリア時代、ここでは、インド象が飼われていたそうです。そして、毎日、グロヴナー・スクエアとマンチェスター・スクエアとの間を散歩させていたそうです。 そんな象の散歩道のために、行政体が、Duke Streetの管理を一本化し、オクスフォード・ストリートの北側にもDuke Streetの名前をわざわざ残したんです。グロヴナー公爵とは、今も昔も力がありますねー。 因みに、このDuke Streetの名前の由来は、ジェームズ2世が即位した1685年に命名されました。即位前の爵位名はDuke of York。 |
by rie-suzuki67
| 2014-07-26 06:23
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